ある中高年ランナーの悪あが記

長引くハムストリングス付着部炎に悩まされながらも走ることを諦めきれない高齢者ランナーの奮闘記

ATペース走をやってみました!(番外編:脂肪の利用 その2)

 このテーマでの前回(2/27)は、「 フルマラソンのレース時に要するエネルギー量とグリコーゲンの体内貯蔵量を比較すると、私の場合はグリコーゲンだけでは257~657kcal足りないものと推定され、不足分については体脂肪のエネルギーで一定程度おぎなうことができる。」というところまでお話しました。

ATペース走をやってみました!(番外編:脂肪の利用 その1) - ある中高年ランナーの悪あが記

 そして、今日は脂肪でグリコーゲンの不足分のすべてを補完できるかについてとレース時における脂肪燃焼の重要性についてお話したいと思います。

 

私のフルマラソン時のエネルギー源の検証

 最初に、私のフルマラソンのレース時におけるグリコーゲンによるエネルギーの不足分を脂肪で補完できるかどうか、運動強度に対応するエネルギー源の割合を考慮に入れて試算してみます。

 まず、次の琉球大学の紀要論文「市民マラソンの運動強度と消費エネルギー 」のデータを参考にして私のフルマラソン時の運動強度を推定することとします。

https://core.ac.uk/download/pdf/59153205.pdf

  この論文は、琉球大学に在籍する体育専攻で長距離を専門としない学生のうち、NAHAマラソンに参加した学生13人(うち男子7人)を対象に、マラソン時の酸素摂取量の最大酸素摂取量に対する割合などを調査したものであり、男子の平均は73.6%VO2maxとなっていました。

 しかし、国外の先行研究3件では、それぞれ75%VO2max、82.1%VO2max、85%VO2maxとなっており、それらに比べるとかなり低い数値となっていますが、そのことについてこの論文では、「被験者が記録を追求せず、制限時間(6時間)内の完走を目的としたことから低い運動強度になったものと考えられる。」と分析しています。

 確かにレースのタイムやランナーの能力によりレース中の酸素摂取量の最大酸素摂取量に対する割合は大きく変わって来ますので、私の場合は、この時の琉球大学のレース時の数値よりもやや高く、他の3件の研究の中では最も低い75%VO2maxとしたいと思います。

 なお、運動強度ごとの脂質と糖質のエネルギー源としての割合は次のグラフのようになります。

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厚生労働省:特定保健指導の実践定期指導実施者養成プログラムより

 そして、このグラフから見ると、75%VO2maxの場合はエネルギーの25%程度を脂肪が供給しており、私のフルマラソン時の必要エネルギーは前回お示しした計算で2,257kcalでしたのでその25%、つまり564kcalを脂肪により、そして残りの75%の1,693kcalをグリコーゲンで賄っていることになります。

 しかし、このグリコーゲンの使用量は、体内貯蔵量の予測数値の1,600~2,000kcalの下限を上回っており、もし、体内貯蔵量が1,693kcalよりも少ない場合は、上記のとおりにはならず、その足りない分も脂肪で賄わざるを得なくなります。

 このことをグラフにすると次のようになります。

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フルマラソン時のエネルギー源

 そのため、脂肪については、564kcal又はグリコーゲンの体内貯蔵量が不足する場合には最大それに不足する93kcalを加えた657kcalが必要ですが、脂肪の場合は体内貯蔵量が非常に多いので脂肪も合わせると、計算上は、フルマラソン時にエネルギーが完全に枯渇するということはないことになります。

 ちなみに私の脂肪のエネルギー量を推定すると、体脂肪率10%と仮定して(※いつも測定している家庭用の体組成計では6%前後ですが、これは簡易的なもので数値にはだいぶ誤差があると思います。以前、スポーツクラブで測定した時は10%ほどでしたので、ここでは10%としてみます。)、体重を52.5kgとすると体脂肪は5,250gあることになります。純粋な脂肪は、1gで9kcalあるのですが、人間の体脂肪には20%ほど水分などが混じっていますので体脂肪1gで7.2kcalということになります。ということは、7.2×5,250=37,800で、なんと37,800kcalもあり、仮にフルマラソンを脂肪だけで走ったとしても(※実際には、そういうことはありえませんが。)私の場合で16.7回フルマラソンを走れる計算になり、体脂肪率がもっと多い人は数10回走れることになります。

脂肪燃焼の重要性

 しかしながら、いくら脂肪の体内貯蔵量が多いと言っても、脂肪を燃焼させるためにはグリコーゲンが必要であり、グリコーゲンが枯渇してしまうと脂肪だけでは走ることができないようです。

 そして低血糖に陥り、「ハンガーノック」と呼ばれるガス欠状態になってしまいます。

 それを回避するためには、まず、①グリコーゲンの体内貯蔵量を増やすため、レースの数日前から「カーボローディング」(※炭水化物を普段より多く摂取すること)を行うことや②レース中も補給食やスポーツドリンクなどで糖質を摂取すること、③レースの戦略として、できるだけグリコーゲンを温存するため、あまりグリコーゲンに頼り過ぎない、逆に言えばなるべく脂肪が利用される運動強度の範囲内でありながら、出来るだけ速いスピードでフルマラソン走りきること、などが必要でしょう。

 

 なお、そのほか、レーニングをすると、運動時のエネルギー源に占める脂肪酸の比率が大きくなり、グリコーゲンの消費を節約することができるとも言われておりますので、トレーニング方法の一例として次の記事をご紹介します。

tarzanweb.jp

 

 また、同様なことが次の日清オイリオの記事にも書かれています。

www.nisshin-oillio.com

 そして、日清オイリオで最近(?)発売した「MCTチャージ」というゼリー飲料は、1本に6gのMCT(中鎖脂肪酸油)が配合されており、その主成分である中鎖脂肪酸は、一般的な油に比べて素早くエネルギー分解するとのことです。

 商品はこれです。

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 実は、これは「ランナー応援キャンペーン」のサンプル品ということで、応募の上、無料でいただいたものです。

 4回ほど摂取しましたが、まだマラソンレースなどグリコーゲンが枯渇するような場面での摂取はしていないので、今のところ効果のほどは分かりません。

 今度、例えば30kmペース走などを空腹状態で実施する際に摂取し、効果が感じられるようでしたら愛用したいと思っています。

 

 これで4回に亘ってお届けした「ATペース走」関連のお話は終わりです。いつもご覧いただき、ありがとうございます。

 ATペース走については、定期的に続けていると、ATペースそのものが上がってくる(=走力が向上する)と言われていますので、これから暖かくなれば週1回程度のATペース走を実施したいと考えています。