ある中高年ランナーの悪あが記

長引くハムストリングス付着部炎に悩まされながらも走ることを諦めきれない高齢者ランナーの奮闘記

がん免疫療法抗体は老化細胞を除去するようです!

 昨日(11/3)の朝、新聞を見ていたら次のような記事が目に入りました

2022.11.03 秋田魁新報

2022.11.03 秋田魁新報

 この記事を要約すると、

①細胞は古くなると新しい細胞に置き換わる時に自ら死んでいったり(※アポトーシス)、免疫細胞の働きで食べられて無くなったりする

しかし、中には除去されずに一部が体内に蓄積するものがあり、これが老化細胞である。老化細胞は、炎症を起こし臓器の機能低下や生活習慣病に関与するとされる。

③東京大医科学研究所と金沢大の研究チームは、免疫細胞にある「PD1」というタンパク質が一部の老化細胞が持つタンパク質と結合すると免疫反応にブレーキがかかって老化細胞が除去されないことを発見。

④PD1の働きを防ぐ抗体(※オプジーボなどのがん免疫療法にも使われている)を投与した動物実験により、抗PD1抗体が老化細胞を減少させることも実証した。

 ということのようです。

 ただ、この中の③はもう少し詳しい説明が欲しいところです。

 その東京大学医科学研究所のホームページにこの新聞記事と同じテーマでのプレスリリース記事がありました。

www.ims.u-tokyo.ac.jp

 このホームページの記事の中に「免疫による除去される老化細胞」と「加齢に伴い蓄積する老化細胞」の違いを図にしたものがありましたので、それを掲載させていただきます。

東京大学医科学研究所HPより

 つまり、免疫細胞であるCD8陽性T細胞は、PD-L1陰性老化細胞を除去することは出来るが、PD-L1陽性老化細胞に対しては、CD8陽性T細胞のPD-1というタンパク質がPD-L1陽性老化細胞のPD-L1というタンパク質と結合することによって免疫反応にブレーキがかかり、この老化細胞は除去されない。しかし、マウスによる実験ではPD-1の働きを防ぐ抗PD-1抗体を投与することによってこのPD-L1陽性老化細胞が有意に減少し、臓器・組織の老化現象が改善された、とのことのようです。

 いずれにしろ、これまでも老化に伴って慢性的な炎症が起こりやすくなるとは言われていましたが、それが老化細胞から分泌される炎症性サイトカインによるものであることは初めて知りました。

 また、PD1の働きを防ぐ抗体の投与によって、少なくとも動物実験では老化細胞が減少し、臓器・組織の老化現象が改善されることが分かったことは、一人の老人として大きな朗報です。

 私がこの1年悩まされているハムストリングス付着部炎がこの老化細胞に関係があるのかどうかは分かりませんが(直接の引き鉄となったのはオーバートレーニングでしょうが、そのリスク要因として加齢もあることから、その可能性はあると思います。)これからは一層、細胞の老化を意識しなくてはなりません。

 とは言っても、老化細胞を除去することを目的とした抗PD1抗体医薬品がすぐに開発・承認されることは難しいでしょうし、仮に良い医薬品が承認され、更に保険適用を受けたとしても薬価はかなりの高額になることが予想されます

 現在ある抗PD1抗体医薬品の代表的存在であるオプジーボについては、当初は薬価が約73万円/100mg(※体重66kgの人が年26回投与したとして年間約3,800万円)で非常に高額であり、現在は約15.5万円/100mgと5分の1ほどになっていますが、それでも依然として高額です。

 まあ、保険適用を受けているので患者負担は通常1割~3割となり、さらには高額療養費制度も活用できますので患者負担は極端に過大なものにはならないでしょうが、患者負担以外は健康保険からの負担となりますので、このような抗PD1抗体医薬品を老化細胞除去にも対象を拡げた場合、薬価を低いものにしない限り保険財政を圧迫することは目に見えています

 ですので、老化細胞除去のための抗PD1抗体医薬品の開発に期待はしますが、その恩恵を受けることはなかなか簡単ではないように感じています。

 

 また、同じ東京大学医科学研究所による研究で老化細胞を除去するための別のアプローチとしてGLS1(グルタミナーゼ1)阻害薬という老化細胞除去薬も開発されているようです。

project.nikkeibp.co.jp

 この記事によると、個体の中で多種多様な老化細胞を生き延びさせているのがGLS1という酵素であり、この働きをブロックして細胞死(アポトーシス)を誘導し、老化細胞を取り除くのがGLS1阻害薬というもので、既に内服薬として製剤化されて、米国ではがん患者に対する治験に用いられてヒトへの安全性は確認されているそうです。

 そして、この製剤を使うことができれば1~2年以内に(※2022年1月時点で)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の臨床試験を開始できる可能性もあり、NASH以外にも2型糖尿病、腎不全、動脈硬化、慢性閉そく性肺疾患(COPD)など様々な加齢性疾患や生活習慣病の治療にも役立つ可能性があるとのことです。

 

 さらに、これとは別に、老化細胞除去を目的としたワクチンもすでに開発されているという記事を見つけました。

www.juntendo.ac.jp

 なお、開発が成功したのは、血管内皮細胞の老化抗原をターゲットにしたワクチンで、別の組織の老化細胞には別の老化抗原の存在が予想されるとのことですので、これらに対するワクチン開発はまだ先のことになりそうです。

 

 このように、老化細胞を除去するための研究は日々進んでいるようですが、それらの研究の恩恵を受けるのにはまだ年月がかかりそうですので、とりあえずは現時点で手軽にできる細胞の老化を抑える方法を実践するしかありません。

 まず、細胞の老化を抑制するためには食生活や運動が重要と言われていますが、ビタミンB2を摂取するとミトコンドリアが活性化されて細胞が老化するのを抑制する、という研究の記事がありました。

www.kobe-u.ac.jp

 ミトコンドリアは、私の以前のブログにもあるように免疫反応全体の司令塔になっており、免疫のスイッチを入れるほか、ウィルスに感染した細胞をアポトーシス(自殺)させたりしますので、ミトコンドリアが活性化すると細胞の老化が抑制されるというのは納得です。

chuukounenrunner.hatenablog.com

 ミトコンドリアは、エネルギーの生産工場でランニングをする上でも大事な物質であり、これからはビタミンB2を積極的に摂取してミトコンドリアを活性化させ、細胞の老化を防ぎたいと思います