ある中高年ランナーの悪あが記

長引くハムストリングス付着部炎に悩まされながらも走ることを諦めきれない高齢者ランナーの奮闘記

ATペース走をやってみました!(後編:ATペースの測定方法等)

 先日(2/21)は、マラソンを走る上でなぜATペースが重要であるか、についてご説明させていただきました。

ATペース走をやってみました!(前編:ATペースとは?) - ある中高年ランナーの悪あが記

 今日は、ATペースの測定方法と、2/21に行った私のATペース走の結果についてお話させていただきます。

ATペースの測定方法等

 まず、前回のおさらいをすると、AT(無酸素性作業閾値)とは、「運動の強さを増していくとき、筋肉のエネルギー消費に必要な酸素供給が追いつかなくなり、血液中の乳酸が急激に増加し始める強度の値」ということでしたね。

 そのことを念頭に置きながら、ATの測定方法等をいくつか挙げたいと思います。

①LTの測定

 まず、ATの測定には、血液中の乳酸を採取して測定することが一番、上記の定義にかなうことになります。そして、この方法で得られた閾値をLT(乳酸性作業閾値)といいます

 前回の説明の中のATポイントのイメージ図でAT(LT)ポイントをカッコ書きでLTと書いていたのは、この方法で得られた閾値つまり乳酸性作業閾値であることを示すものだったのです。

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 しかし、この方法は最も正確と思われますが、採血したり専門的な技術を必要とするなど、一般の市民ランナーが行うことは困難です

②VTの測定

 次に、市民ランナーなどでも測定可能な方法として、VT(換気性作業閾値)を測定する方法があります。

 これは、TV番組などでご覧になった方もいると思いますが、口に防毒マスクのようないかついマスクをつけて、トレッドミル(ルームランナー)で一生懸命走っているあの様子です。

 あれは、何をしているかというと、呼気ガスを採取しており、酸素摂取量に対して二酸化炭素排出量が増大するポイントをVTとするのです。

 では、なぜVTがATを表す(近似する)のかというと、徐々に運動強度が増加し、乳酸系が働き始めると乳酸がより多く産生されます。これは前回お話したとおりですね。

 そして、こうなると体内では、この乳酸を代謝する働きが始まり、その代謝する働きの一つが二酸化炭素の産生です。

 そのため、呼気ガスの中の二酸化炭素が急激に増えるポイントが血液中の乳酸の急激な増加のポイントに近似することになり、それによってATを推定することが可能になる、ということのようです。

 これも、専門的な機材などを備えている施設でしか測定できませんが、首都圏などでは有料で測定してくれる施設がいくつかあるようですので、機会があれば私も測定してみたいと思っています。

③HRTの測定

 以上のように、①と②の方法はあまり一般的ではありませんが、心拍数で比較的簡易にATが測定できるともいわれています。

 ある研究によると、「ランニング速度を徐々に高めていくとある時点までの心拍数は直線的に増加するが、その時点を超えるとランニング速度の高まりにもかかわらず徐々にその心拍数の増加率が低下する(変曲点がみられる)」とし、LT等の指標と密接な関係がある、とされています。そして、その変曲点をHRT(心拍性作業閾値というそうです。

 これなら測定は簡単ですね。ランニングの速度と心拍数が測れるGPSウォッチがあれば測定可能ですから。

 実は、私もこの測定を試みたことがあります。

 走り始めて間もない20数年前ですが、セイコーパルスグラフという心拍数が測れるランニングウォッチを買ったのです。

 それまでも心拍数を測れる時計は販売されていましたが、センサーが心臓の上にあてがわれるもので、それを押さえる細いベルトを胸に巻かなくてはならず、なんか面倒だし、後ろから見るとブラジャーのひもみたいで嫌だなあと思っていました。

 しかし、このセイコーパルスグラフは、手の指で脈を測るので、センサーは指にはめ込むだけでいいのです。

 これです。結構、大きいですね。

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 そしてまた、この時計の取り扱い説明書には、ATの測定方法として上記のHRTの変曲点について書かれていました。

 そこで早速、ATの測定に挑戦しました。

 GPSウォッチではないので速度は測れませんが、一定の距離を決めて掛かった時間で速度を割り出し、徐々にスピードを上げて、その時々で心拍数を見て行ったのですが、結果からいうとうまくいきませんでした。

 確かにスピードを上げていくと心拍数も上がるのですが、心拍数の増加率が低下する変曲点が現れないまま、それ以上スピードを上げることが出来なくなってしまうのです。

 これについては、トレーニング指導者の野口克彦氏も自身のブログで、「HRTには、出現性や信頼性に問題があり、心拍数だけでは無酸素性作業閾値(AT)を決定(推定)することは難しい。」と言っています。

note.com

 

④簡易計算式の利用

 ①と②は簡単に出来ない、③は出現性や信頼性に問題がある、となるとどうすればよいのでしょうか?

 実は、ATの測定については、簡易的な測定方法として、

AT心拍数=(最大心拍数-安静時心拍数)×0.75+安静時心拍数

という計算式があります

 これを私に当てはめてみましょう。

 最大心拍数は「220-年齢」という目安もありますが、個人差が大きいようです。私は、昨年の7月に10kmペース走をした時の平均心拍数が162でしたので、最大心拍数はそれよりも少し多い170としてみます。

 また安静時心拍数は、起床時は50前後ですので、50とすると、

AT心拍数=(170-50)×0.75+50=140 となり、やや強度が低いような感じがします。

※なお、この0.75という係数は絶対的なものではなく、0.6~0.8までの幅があるようです。

 

ATペース走の結果

 次に、2/21に行ったATペース走の結果です。

 まずは、ランのスピードの設定をしなくてはならないのですが、上記の心拍数で走るのでは少し遅い感じがします。

 そこで、最近のフルマラソンで後半も失速せずに走れた時の中でベストタイムの時のスピードがATペースに近いものと判断し、キロ5分10秒前後で走ることにしました。

 以下がその結果です。

距離:10.1km(421.95m×24周)

タイム:51分43秒

速度:5分07秒/1km

心拍数:150

でした。

 最初は、満足にウォームアップをしないで走ったため、苦しくて設定速度より少し遅かったのですが、後半楽になったので、帳尻を合わせるため少しスピードアップし、結果としては設定タイムより少し速くなってしまいました。

 ただ、終盤になっても、まだずっとこの速度で走り続けられそうな感覚でしたので、このキロ5分10秒前後というのが、現在の私のATペースのようです。

 また、心拍数の150というのも妥当なところで、最近のマラソンレースでも150前後になっていました。

 となると、先ほどの簡易計算式

AT心拍数=(最大心拍数-安静時心拍数)×0.75+安静時心拍数

での心拍数は140でしたので、この計算式はあまりあてにならないのか、又は仮に170とした私の最大心拍数が大きく違っているか、はたまた係数の0.75が小さすぎて上限の0.8を選択すべきなのか、ということになります。

 まあ、20年ほど前は最大心拍数が200くらいでしたので、1年で1下がるとすると現在は180となり、その数字で計算すると、

AT心拍数=(180-50)×0.75+50=148 となり、今回のATペース走時の平均心拍数150に近似します。

 冬の間は、強度の高いランニングはまったく行っていなかったので、ぎりぎりまで心拍数を上げるような走りは今はできませんが、これからは暖かくなりますので、インターバル走や坂道走を行い、現在の最大心拍数を把握して、もう一度計算してみたいと思います。

※2021.2.28追記:坂道走を全力に近い運動強度で行ったところ、最大心拍数は177でしたので、全力であれば180以上になりそうです。よって、この簡易計算式は、案外妥当かもしれませんね。 

 これでATペースについてのお話は終わりですが、前回触れなかったエネルギー源としての脂肪の利用については、次回、番外編としてお話させていただきますので、またご覧ください。