ある中高年ランナーの悪あが記

長引くハムストリングス付着部炎に悩まされながらも走ることを諦めきれない高齢者ランナーの奮闘記

加齢に伴ってミトコンドリアの質が低下するようです

 私のブログのタイトルは、「ある中高年ランナーの悪あが記」ですが、テーマは「加齢に伴う身体能力の低下にいかにして抗って走るか」を中心にしており、日々苦戦しているところです。

 さて、加齢に伴うランニング能力の低下は、筋力の低下や心肺機能の低下などいくつかの要因によるものと思われますが、それらの根本原因は「細胞の老化」が主なものと考えられます。

 人間の細胞は限られた回数しか分裂・増殖することが出来ないと言われており(がん細胞を除く)、加齢に伴って細胞の再生の時間は長くなり、やがては再生しなくなるようです。歳を取ると怪我の治りが遅くなるのは、そのせいでしょうか?

 時間がある方は、次に貼りつける長寿科学振興財団の健康長寿ネットの中の「細胞の老化の原因と症状」という記事をご覧ください。

細胞の老化の原因と症状 | 健康長寿ネット

 この記事の中で、加齢に伴う細胞内の変化については、

細胞内に存在しており、私たちが活動するためのエネルギーを作り上げるミトコンドリア」の質が低下します。それに伴い、活性酸素を消去する酵素である「スーパーオキシドディスムターゼ 2(SOD2)」という物質の量が減少し、活性酸素の除去が遅くなります。すると、細胞へ直接的にダメージを受ける機会が増えます。この変化が多くの細胞で起こることで、細胞数の減少や機能の低下が見られるようになります。

とあります。このように、加齢に伴ってミトコンドリアの質が低下することはこれまでも知られており、それはミトコンドリアの中の古くなったタンパク質の入れ替わりが加齢に伴って十分に行われなくなるため質が低下すると書いていた本があったと記憶しています。

 骨格筋細胞は、筋肉の損傷時などを除けば、基本的には細胞の入れ替わりは行われず、細胞内のミトコンドリアは、その中のタンパク質が入れ替わることによって新陳代謝を行っているのですが、その入れ替わりが十分に行われないとなるとミトコンドリアの質も低下するのでしょう。

2021.8.9追記

ミトコンドリア内のタンパク質の入れ替わりについて書かれた文献を見つけましたのでご紹介します。

まず、「ミトコンドリアにバレル(円筒)型膜タンパク質を組み込む仕組みを解明」という論文です。

https://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20210107.pdf

この論文の中には、「ミトコンドリア外膜と内膜の二枚の生体膜に囲まれ,1000 種類以上のタンパク質から構成されており、これらのタンパク質のほとんどは、ミトコンドリアの外で合成されてからミトコンドリア内へと搬入される」ということが書かれています。

そして次の論文

http://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2013/05/83-02-09.pdf

にもあるように、「ミトコンドリア内では抗酸化酵素により ROS(活性酸素) の影響を軽減し、また傷害を受けたミトコンドリア DNA やタンパク質を修復・分解することで品質管理を行っており、こうした品質維持能力を上回る傷害をミトコンドリアが受けた場合、細胞はオートファジーを利用して機能不全に陥ったミトコンドリアをまるごと分解している」と考えられています。

そしてまた、「加齢に伴うオートファジー低下のメカニズム」という論文には、「多くの生物で加齢に伴いオートファジー活性は低下することが報告されている」ということが紹介されています。

https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2020.920236/data/index.html

 これらの文献を総合すると、ミトコンドリアはタンパク質で構成されており、②ミトコンドリアが傷害を受けた場合は、タンパク質を修復・分解することで品質管理を行っているが、修復不能な場合には細胞はオートファジーによりミトコンドリアをまるごと分解して品質を維持している。③ところがこのオートファジーの活性は加齢に伴い低下する。ということで、確かに加齢に伴ってミトコンドリアの質は低下するようです。

 そして、ランナーにとって大問題なのは、エネルギーの生産工場であるミトコンドリアの量と質が低下すると、当然、ランニングのスピードも落ちてしまうということです。

 この「細胞内のミトコンドリアの質が加齢とともに低下する」ということについては、同一人物由来の加齢モデル細胞系列を用いた研究(※この研究は、30 年以上もの歳月をかけ、同一人物の皮膚から 36歳、47 歳、56 歳、62歳、67歳の時点で採取した細胞を用いて行った。)があり、非常に興味深いものでしたので、ご紹介します。

https://www.kose.co.jp/company/ja/content/uploads/2016/08/20160803a.pdf

 これを見ると、残念ながら加齢に伴ってミトコンドリアの質が低下するのは、間違いがないようです。

 ただ、ミトコンドリアの質の低下を食い止める方法が無いものか調べてみると、かすかな希望もあるようです。

 名古屋大学によるプレスリリースで「加齢に伴う骨格筋の機能低下が運動によって改善されるしくみを解明」という記事で、その中には「運動トレーニングによりミトコンドリアの生合成促進が認められた」との内容も書かれていました。次のとおりです。

https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/research/pdf/ampk_20161212jp.pdf

 残念ながらこれはマウスでの実験結果ですが、人間にとっても同じ効果があることを期待し、これからもランニングを継続することとします。

 また、ミトコンドリアは、加齢に伴い質だけではなく量も減少するとも言われていますが、ミトコンドリアの容量の増量のためには、インターバルトレーニングを行うことが有効との研究結果がありますので、故障が完治したらインターバルトレーニングを再開し、加齢に負けずにミトコンドリアの質と量の維持に努めたいと思っています。