ある中高年ランナーの悪あが記

加齢に伴う衰えを感じつつ、それを受け入れたくない中高年ランナーの奮闘記

こんなにあった!間違ったトレーニングの常識

 一昨日(1/1)は、「一年の計は元旦にあり」ということで、元旦に立てた計画をご紹介させていただきました。

 「一年の計は元旦にあり」は、いわゆる「格言」でしょうから、訓戒又は助言として有用な言葉として素直に従いたいと思いますが、世の中にはこれまで常識と言われてきていたものが実は間違いだったということが数多くあります。

 そこで、今日はその中でも運動に関する間違った常識について、思いつくままにお話ししたいと思います。

運動中の給水

 私が学生の頃には、運動中に水を飲んではいけない、と言われていました。

 私は 、運動には縁がなかったので、直接そのようなことを言われたことはありませんが、当時はそれが常識でした。

 それが今では、熱中症の予防のため水分補給の大切さが叫ばれており、まったく真逆の状態となっています。

ウサギ跳び

 「ウサギ跳び」ってご存知でしょうか?今の若い人はご存じないかも知れませんね。

 膝を深く曲げてしゃがんだ姿勢のまま、主に足首の曲げ伸ばしで跳躍を繰り返すトレーニング法です。「巨人の星」のアニメで主題歌が流れる時に主人公の星飛雄馬がウサギ跳びをしているシーンが出て来ますが、あのトレーニングです。と言っても、若い人は「巨人の星」も分からないかな?

 これは、体育の時間によくやらされた記憶があります。

 ところが、1980年頃から「ウサギ跳び」は、膝や足首の筋肉を傷める危険性があるということが言われ始め、今では禁止されているようです。

腹筋運動(シットアップ)

 腹筋運動で代表的なものは、シットアップと言って、仰向けに寝ている状態から上体を起こす動作です。

 私も以前はこのトレーニングを行っていました。しかし、このトレーニングによって腰を痛めることがたびたびあったので、1~2年前から行っていません。

 そして、先日偶然見つけたのが、日本バスケットボール協会腹筋運動は腰痛の原因となるので推奨できないとしたこの記事です。

www.asahi.com

 腹筋運動を行うとすれば、シットアップではなく、上体を起こさずに胸部を曲げるカールアップが安全のようですね。

乳酸は悪者?

 私がランニングを始めた1996年頃は、まだスポーツ誌などでも乳酸は「疲労物質」として認識され、「乳酸が溜まって動けなくなる」とか「乳酸が溜まって疲れが取れない」などと言われていました。

 短時間で強度の高い運動をして疲労困憊になった選手の血液を採取した時に乳酸値が上昇していたことから、疲労の原因が乳酸にあると思われたようです。

 でも、その後、この考えが間違っていることが複数の研究で証明され、現在では乳酸が疲労物質ではないことが常識となっています。

 考えてみれば、強度の高い運動をするためには多くのエネルギーを必要とし、有酸素系のエネルギー供給では間に合わないことから、乳酸系のエネルギー供給を行うことになり、その場合、エネルギー源のグリコーゲンは最後は乳酸にまで分解されるので、血中乳酸濃度が上昇するのは当然のことです。

 1996年頃は、まだスポーツ誌などでも乳酸は「疲労物質として認識されていた」、と先に述べましたが、その頃私が読んだ疲労と体力の科学」(矢部京之助著)という本には、「運動をはじめてから数分間は酸素の供給が間に合わないためにグリコーゲンは無酸素的に分解される。その最終産物の一つに乳酸の生成がある。乳酸の蓄積が一定水準に達すると筋活動はおこらなくなることから、疲労の原因は乳酸の蓄積と考えられのである。」と、その時には既に「乳酸=疲労物質」という考えは間違いであることを示唆しています。そしてその本の初版は1986年に刊行されていますので、一部ではだいぶ以前から乳酸が疲労物質ではないと思われていたようです。

 それにもかかわらず、その後も長い間、乳酸は悪者として扱われていましたが、最近ではようやく多くの人から乳酸は疲労物質ではなく、生成された乳酸はエネルギー源として持久的な運動を司る遅筋繊維や心筋細胞内のミトコンドリアで利用される有用な物質であることが理解されるようになりました。

 なお、乳酸を悪者とした理由の一つに、「筋の中の乳酸濃度が非常に高くなると筋のpHが極端に低下し、それが筋の硬直や痛みを引き起こし、さらにはこのような状態では無酸素エネルギーを発生させる酵素の働きが抑制されるため、エネルギーが不足して運動を続けられなくなってしまう」という説がありました。しかし、2016年に刊行された「すべての疲労は脳が原因」(梶本修身著)と言う本には、(このような時にも)筋肉内のpHは一定範囲内に保たれており、運動によって極端に酸性に傾くことはありません。さらに最新の研究では、乳酸の増加とそれに伴う若干の酸性化はむしろ筋肉の活動を促進することがわかってきています。」ということが書かれており、ここでも乳酸が悪者であることが否定されています。

BCAA(分岐鎖アミノ酸)の疲労回復効果

 BCAAってご存知でしょうか?

 タンパク質は、約20種類のアミノ酸で構成されており、そのうち9種類は体内では合成できない必須アミノ酸です。そして、そのうちの3種類のバリン、ロイシン、イソロイシンをBCAA(分岐鎖アミノ酸)と言います。

 数年前までは、BCAAはランニング中の疲労回復に効果があると言われており、それらを含んだスポーツドリンクがその効果を前面に打ち出して大々的にCMを流していました。私も何度も購入して飲んでいましたし、マラソン大会においても給水所でスポーツドリンクとして提供されることもありました。

 その疲労回復効果の理論はこうです。

 「長時間の運動は、エネルギーの再生産の手段として遊離脂肪酸や血液中のBCAAを使うようになる。⇒この遊離脂肪酸とBCAAの利用により、BCAAの血中濃度が低下すると脳内のセロトニンの合成が増加する。⇒合成されたセロトニン中枢神経に働きかけて疲労感を発生させる。」というものです。まずは、疲労感の機序ですね。

 もう少し詳しくお話すると、

 脳は人間にとって極めて重要な臓器であるため、血液によって脳に有害な物質が入ることを防止するために、脳に入る前に血液脳関門というゲートを通らなくてはならないが、BCAAは、血液脳関門を通過して脳の中に入ることができる。また、トリプトファンという脳内でつくられるセロトニンの材料になる物質も血液脳関門を通過するが、これらの通過の際には、BCAAの輸送体とトリプトファンの輸送体が競合するという性質を持っている。つまり、血液中のトリプトファン濃度に対してBCAA濃度が低下すると脳内へのトリプトファンの取り込みが増加し、脳の疲労度が増加する

ということになります。

 このことを前提に、運動時の疲労回復については、「脳の疲労感を予防するためにはBCAAを含むアミノ酸を摂取してトリプトファンの脳への取り込みを低下させることが有効である。」ということが結論のようです。

 

 そして、今でもこれらの考えはおおむね間違っていないようです。最も大切な点を除けば。

 どこが間違っているかというと、アンダーラインの部分のセロトニン疲労感を発生させる」、「脳の疲労度が増加する」という部分です。

 私も以前は、これまで言われてきた説を信じていました。

 というのは、食事をするとセロトニンという体内物質が出て眠くなる、という話を聞いたことがあったからです。つまり、眠くなることと疲労感には密接な因果関係があるものと勝手に解釈し、私もセロトニン疲労感の原因物質の一つだと思い込んでしまいました。

 しかし、7~8年ほど前でしょうか?偶然にも、うつ病の治療にセロトニンの量を増やす薬が用いられていることを知り、セロトニンに対する認識が変わりました。もし、セロトニン疲労感を発生させるものであるとすれば、気分が落ち込むなどの症状があるうつ病の治療に用いられるはずはありませんので。

 現在では、むしろセロトニンの減少が疲労感を増幅させることは、ほぼ常識となっているようで、セロトニンを減少させるBCAAには、マラソンのレース中などにおける疲労感減少効果は望めないどころか、まるで反対の結果になるようです。

 ただ、BCAAに全く効果がないわけではなく、筋肉に強いダメージが及んで損傷するような激しいトレーニングやスポーツを行った時は、筋肉内ではBCAAが不足するので補った方が良く、また、BCAAのうちの一つであるロイシンは、筋肉にタンパク質を合成するスイッチを入れる働きがあると言われており、筋肉を大きくしたい時にはBCAAの摂取が有効のようです。

 なお、セロトニン疲労の関係について、分かりやすく説明した記事がありましたので、よろしければご覧ください。

セロトニンを増やして疲労回復

 

 このように、これまで常識のように言われてきたことが実は間違いだった、ということは他にもたくさんあると思いますし、今は常識となっていることも、いつかは非常識とされる場合ももちろんあると思います。

 まあ、時にはいたちごっこのようになるかもしれませんが、なるべくなら間違った常識にとらわれずに早く正しい情報が得られるよう、世の中の動きに目を向けて行きたいものです。

 昔、河島英五が歌った「時代おくれ」といういい歌がありましたが、このようなことでは「時代おくれ」にはなりたくありませんので。