ある中高年ランナーの悪あが記

長引くハムストリングス付着部炎に悩まされながらも走ることを諦めきれない高齢者ランナーの奮闘記

サブ3.5復帰プロジェクト

 マラソンの目標設定をする場合、区切りの良いところで、3時間未満のサブ3や4時間未満のサブ4などが目標として掲げられることが多いのですが、その中間としてサブ3.5もよく聞かれる目標タイムです。そして月刊誌「ランナーズ」の2019年度の「全日本マラソンランキング」によると、サブ3.5の達成者は男性で全完走者の12.4%となっていますが、私の今の年齢の68歳では、1,053人中9人で0.9%とかなりの狭き門となっています。

 私は60歳を最後にサブ3.5から遠ざかっていますが、サブ3.5に復帰するという非常に困難な目標に挑戦することとし、以下の内容による「サブ3.5復帰プロジェクト」を立ち上げたところです。(プロジェクトと言っても、メンバーは私一人です。単なる言葉の遊びで、決まっているのは、到達点とそれに至るための練習内容のみです。)

目標達成への3つの取り組み

①ランニングフォームの改善

 マラソンのタイム向上には、最大酸素摂取量、無酸素性作業閾値そしてランニングエコノミーの向上が重要な要素となりますが、ランニングエコノミーの向上のためには、無駄のない動きのランニングフォームが求められます。

 私は、レース終盤に身体が傾くことが多く、また左足が過回内すること、さらには腰が落ち気味であるなど、決して良いランニングフォームではないことから、既に現在これを克服すべく身体の前後や左右の筋力バランスの改善に加え、インナーマッスルの強化などを始めたところでです。

 また、ランニングフォームをビデオに録りフォームをチェックしたところ、次のような欠点に気づきました。下の写真をご覧ください。

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 う~ん。どうやら顔が分かってしまいますね~。まあ、仕方がないか。

 この写真の②を見ると、左足での着地の際に上体が左側にブレています。また、①の写真では良く分かりませんが、右足での着地の際には上体が右側にブレような感じがします。上体のブレは余分なエネルギーの消費につながることから、改善が必要です。

 この上体のブレの原因についてですが、私の腕振りは腕を抱え込むようになっており、③や④を見ると手が身体の中心線くらいまで来ています。この結果、肩も内側に入りこみ、上体がブレることになります。今後は、腕の抱え込みをやめ、脇を適度に締めることとします。

 もうひとつ。腕の引きです。

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 ⑤や⑦を見ると右腕は十分に後ろに引かれていますが、⑥や⑧を見ると左腕は後ろへの引きが弱いようです。私は、いつも左腕の腕振りでランニングのリズムを作っており、左腕を回すようにして走っているので、そのために左の腕振りが不十分となっているものと思われますが、今後は、左腕についても正しい腕振りを意識して走ることとします。

 以上を意識しながら、今後も定期的にランニングフォームの改善状況を確認することとします。

②最大酸素摂取量Vo2Maxの向上

 最大酸素摂取量とは、1分間に体重1kgあたり取り込むことができる酸素の量(ml/kg/分)です。

 私たちは呼吸をすることで酸素を体内に取り入れ、酸素を利用して糖や脂質を分解することで運動エネルギーを作り出しており、最大酸素摂取量は有酸素運動能力を反映し、長時間の最大限下の運動持久力を決める重要な要素となります。

 ところで、ランナーにはスピード型とスタミナ型とあり、タイム向上へのアプローチとしては、欠点を克服するためのトレーニングに重点を置く方法があります。また、逆のアプローチとしては、長所をさらに伸ばすこと、つまり、長所のスピードを伸ばすことでタイムを効率的に短縮できる場合、あるいは長所のスタミナを鍛えることでタイムを更に短縮できる場合があります。(ただ、長所は既にある程度伸ばしているでしょうから、タイムの伸びしろという点では、欠点の克服の方が、優位かと思われます。)

 そして、ここでこの2年間でのフルマラソンのベストタイムとなっている2019年3月の佐倉健康マラソンとセカンドベストである2020年1月の勝田全国マラソンのそれぞれのスプリットタイムをご覧いただきます。

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2019佐倉健康マラソン

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2020勝田全国マラソン

 これらの表の21.0975km(中間)のスプリットタイムを見ると、いずれも目標とする3時間30分の半分である1時間45分を上回っており、これではいくらスタミナを鍛えて後半の落ち込みを少なくしても3時間30分を切ることはできないことになります。

 よって、私が今行うべきことはスピードの強化であり、そのためには最大酸素摂取量の向上が必要とされます。

 そして最大酸素摂取量の向上には、インターバルトレーニングが有効であることは良く知られているところですが、私はこれまで負荷の高いインターバルトレーニングを避けて来ました。しかし、今後は積極的にインターバルトレーニングを取り入れ、最大酸素摂取量の向上を図ることとし、定期的に測定してトレーニングの成果を確認することとします。

 最大酸素摂取量の測定は、これを正確に行う「呼気ガス分析法」は専用の装置を必要とするため、間接的にこれを推定する間接法により行うこととし、いくつかある間接法の中から私は「クーパーテスト」という12分間で走った距離により最大酸素摂取量を推定する方法を選択しました。

 なお、その計算式はいくつかの種類があり、どれも近似の結果となるようですが、私は最近よく用いられている

最大酸素摂取量Vo2Max(ml/kg/分)=(12分間の走行距離(m)-504.9)/44.73

という計算式を用いることとしました。

 そしてこの12分間走の直近の数字では、4月下旬になりますが、走行距離は2,760mであり、この場合最大酸素摂取量は50.42(ml/kg/分)となります。

 なお、最大酸素摂取量をもとにフルマラソンのタイムを推定する計算式もいくつか存在しており、その中では予想タイムが実際より速いものとなる傾向にあると言われている「FosterとDanielsのフルマラソンタイム推定式」の

ラソンの記録(分)=387.3-3.45×最大酸素摂取量(ml/Kg/分)

を用いると私の場合は推定される最大酸素摂取量と最近のフルマラソンのタイムが近似します。これは、おそらく私が「スタミナ型」のランナーのためであるものと思われます。

 そして、この計算式をもとに計算すると、私の最大の目標であるサブ3.5を達成するためには、最大酸素摂取量を51.4(ml/kg/分)まで向上させる必要があり、この時の12分間の走行距離は2,804mとなります。

 よってこの数値を目指して、苦手なインターバルトレーニングに取り組むこととしますが、インターバルトレーニングにもその強度や距離、回数など、目的に応じて様々な実施方法があるようです。

 最大酸素摂取量に関連する要素としては、①心臓機能(最大心拍数、1回拍出量)、②肺機能(肺活量、正常なガス交換)、③赤血球の中のヘモグロビン量、④骨格筋中の毛細血管数、ミオグロビン量、赤筋の割合、⑤適正な血流配分、などがこれまでも言われてきましたが、近年、中長距離の陸上競技指導者からは、骨格筋内のミトコンドリア量を重要視する声がインターネット上で聞かれるようになりました。

 ミトコンドリアは、有酸素運動におけるATP(※アデノシン三リン酸。すべての生物のエネルギー源)の産生を担っており、そのエネルギー産生を式で示すと

糖質・脂質 + 酸素 → 二酸化炭素 + 水 + エネルギー(ATP

となります。

 この式だけを見ると、糖質・脂質と酸素の供給量に比例してATPの生産量が無制限に増加するように思えますが、実際はミトコンドリアの量や質によって、ATPの生産量は制限されます。これは、例えるなら、工場にいくら原料が供給されても、工場の生産能力を上回る生産は不可能であることと同じと思います。

 そして、身体不活動や加齢によってミトコンドリア量が減少することはよく知られているところであり、それに伴ってATPの生産量が低下し、走力も低下することになります。

 ところが、逆に、持久性のトレーニングによって骨格筋のミトコンドリアの新生が起こることもまた知られており、そのため、中長距離の陸上競技において、ミトコンドリアを増量するためのトレーニング(※従前とその内容に特段の変化は無いが、視点を変えたトレーニング)が実践されるようになって来たのでしょう。

 実際のトレーニング内容は、それぞれの指導者や選手によってさまざまでしょうが、骨格筋のミトコンドリア容量を増やすための研究結果の一例として、100% Vo2Max程度の運動強度で15分間程度の高強度持久的運動が最も効率的にミトコンドリア容量を増やすという研究結果があります。

 しかし、私を含めて大多数のランナーは、100% Vo2Max程度の強度で15分間の持続的な運動を実施することは不可能であることから、私は、アクティブレストを含めての15分間以上、そして最大では100% Vo2Max程度の高強度運動が継続可能な距離として、「急走200m+リカバリージョグ200m」を10本程度のショートインターバルを行うこととし、頻度は故障を避けるため週1回までとすることとしました。

 なお、このような運動よりももっと一般的なミトコンドリア容量の増量方法としては、カロリー制限があるようです。

 人間の体内にはサーチュイン遺伝子という遺伝子がありますが、この遺伝子が活性化するとミトコンドリア容量が増加するとともに、オートファジー(自食作用)という機構が働いて細胞内の異常なタンパク質や古くなったミトコンドリアが除去されるなど、多くの利点があります。

 しかし、このサーチュイン遺伝子はある条件下でしか活性化しません。その条件としては、前述の運動もありますが、最も一般的なものとしては「空腹」があります。この「空腹」の状態を作るため、食事量を減らすカロリー制限を行うことによってミトコンドリア容量が増加することが数々の研究によって明らかになっています。

 しかし、私について言えば、私は現在、体重51kg台、BMI20以下であり、カロリー制限を行ってこれ以上体重が減少すると逆にランニングパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性もあることから、当面、カロリー制限は行わないこととします。

③無酸素性作業閾値(AT)の向上

 無酸素性作業閾値(以下「AT」という。)とは、軽い運動から運動の強さが徐々に増していく時に有酸素運動から無酸素運動に切り替わる転換点となる運動強度のレベルのことであり、ATを超える激しい運動では酸素の供給が追いつかなって筋収縮のためのエネルギー産生は解糖系(嫌気的代謝)が中心となります。そして、この時、体内のグリコーゲンが大量に消費されることになりますが(※同じグリコーゲンによるエネルギー産生でも、解糖系では、有酸素系に比べて極めて効率が悪いため。)、体内に貯蔵されるグリコーゲンの量には限りがあることから、やがてそのような運動強度の維持は困難となって大きくペースダウンすることになります。

 よって、長距離走においては、ATを超えずにグリコーゲンの消費を節約するスピードでの走りが最も効率的ですが、適切なトレーニングによりATが向上することが知られており、ATの向上のためには自分のATよりもやや下くらいのペース(※感覚的には、つらさはあるもののまだペースを上げるだけの余力があるぐらいの強度。)でトレーニングすることが効果的と言われています。

 そしてATの測定については、簡易的な測定方法として、

AT=(最大心拍数-安静時心拍数)x0.75+安静時の心拍数

という計算式があります。これを私に当てはめると、最大心拍数=165 安静時心拍数=50として、

(165-50)×0.75+50=136.25 となり、やや強度が低いような感じがします。

 いずれにしろAT向上の目的は、レースの終盤まで維持できるスピードの底上げを図ることにあると思いますので、まずは10km前後の距離をフルマラソンのレースペースで走る練習を取り入れることとし、主に週1回の「秋田一ツ森RC」の練習会で実施しています。

 サブ3.5復帰へのロードマップ

 以上のような取り組みよりサブ3.5への復帰を目指し、練習の成果をレースで確認しながら、場合によっては練習内容を修正・強化して、出来れば70歳までには目標を達成したいと思っています。

 具体的なプランもあったのですが、新型コロナウィルス感染症の影響により、今年2月以降、ほとんどのマラソン大会が中止となっているため、取り組みの成果を大会で確認することが出来ない状況にあり、現時点では、具体的なロードマップを作成することは困難です。

 しかし、すべてを新型コロナウィルスのせいにするのではなく、マラソン大会が無くても、目標達成のために求められる12分間走や10kmペース走の数値に早く到達するよう、日々トレーニングに励みたいと思います。

 そのためにも、早く腓骨筋腱炎(?)を完治させなくちゃ!